主役と脇役のはざまで

「エイリアンVSプレデ…もとい、ハーヴェイ・カイテルVSウィレム・デフォー」

 主役を常に張ることを運命付けられた二枚目さん、例えばトム・クルーズと二コール・キッドマンなんつー人種には、昔からどうしても興味が持てません。「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」での演技力は認めるんですが(原作者の女性が、あの白痴俳優に私の作品を映画化させないで、と懇願したというエピソードが有るそうです)、それでも自分で製作したMI2なんか、主役は主役ってポジションを貫いちゃうもんだから(~o~)、やっぱ二枚目は二枚目ですねえ。多分1950年代前の映画って、フランス映画でもハリウッド映画でも、「お約束」の世界だったので、ジェラール・フィリップとか、クラーク・ゲーブルなんていうお方が、万人の認めるスターだったんでしょう。しかしヌーベル・バーグと、ベトナム反戦以後の映画では、ロバート・レッドフォードとか一定の役割論の中でのみ成立する二枚目でしか無くなったように思います。ですから、何かのインタビューで「ブラジルから来た少年」で初めて悪役を演じたグレゴリー・ペックが、「悪役を演じたのは楽しい、しかし意外にこれは簡単だった。それより常に正義のヒーローを違う映画で延々と演じ続けていく二枚目俳優に課せられた錘のほうがずっと大変だ。」と言っており、おお、これは勝ち組人生を歩んできた人しか分からない境地だな、私には縁が無い話(^_^;)と思いました(感心はしましたけどね)。

 という訳で、どしても私は、悪役や脇役で、しかも超絶演技派・技巧派俳優が大好きなんです。そういえば、監督さんでも、もシナリオの巧拙より表現技術がまさっているデビッド・リンチとか、ピーター・グリーナウェイ、テリー・ギリアムが好きですね。さて監督論は奥が深すぎるので脇に置いておくとして、そういう怪優さんのお気に入りを少し紹介したいと思います。前回が完全にマイナーだったので(個人的にはマイジャー、ないしはリトル・メジャーと思っていたんですが)、今回は時に主役も張る人達。

<ハーヴェイ・カイテル ムキムキ中年男>

戦前の生まれですからもう相当なベテラン。デ・ニーロなんかと大して変わらない年齢なんですね。それこそ「タクシー・ドライバー」とか、ジャック・ニコルソン主演の「黄昏のチャイナ・タウン」なんかの名作にちょい役で出演していたらしいです。なんでもマーチン・スコセッシ一派だったのだそう。でも役者として印象強かったのは、やはり何と言ってもクエンティン・タランティーノ監督の傑作「レザボア・ドッグス」でしょう。この後「パルプ・フィクション」「フロム・ダスク・ティル・ドーン」というタランティーノ系列作品での渋い脇役出演が続きます。いっぽう「ピアノ・レッスン」とか「スモーク」では堂々の主演。
 このひと、「スモーク」での煙草屋の主人のように渋い中年の魅力をジミに演じる一方、筋肉ムキムキの油ギッシュなオヤジも演じ分けられ、どうも一筋縄では済ませられないところがすごいですね。ホラー映画やプレスリー狂の役など出演作を選ばない(選ぶ余裕は無い?)ところなど、往年のサム・ペキンパー映画の主要脇役ウォーレン・オーツの現代版みたいな気もします。いっちゃんクールなのはやはり「レザボア・ドッグス」ですが、一番好きな役は「フロム・ダスク・ティル・ドーン」の戒律破り牧師のパパ役ですね。劇画タッチの路線でも、あれは泣けちゃうなあ。

<ウィレム・デフォー 兇相の仕事師>

ウィレムまたは本名はウィリアム・デフォーJr、どうみても容貌魁偉な怪優さん。ミック・ジャガーの3倍恐い顔。
 この人を有名にしたのは、オリバー・ストーン監督のあの有名な「プラツーン」(プラトーンじゃないはず?86年)での孤高のヒーロー「エリアス軍曹役」ですね。
 ただし、私が初めて注目したのは、そりゃやはり飛行機ファンですから、1990年の「イントルーダー怒りの翼」です。ジェット機にもベトナム戦争にも特段興味は無いですし、どう考えても軍が出資(ないしは最大限の協力、あるいは陰のプロデューサー)してるとしか思えないアメリカ至上主義的な唾棄すべきストーリーの映画なんですが(ベトコンは人として描かれていない、ま、アメリカ人にとっては中国以外のアジア人は、日本だろうと韓国だろうとベトナムだろうと人ではないかもしれないが)、が、しかし、この映画は魅せます。実に臨場感溢れる(最もイントルーダーに乗って飛行したことが有る訳じゃないですが、しかしSAMの至近弾を浴びたときの機体の揺れ方、床板のたわみ方なんか、すっげー迫力)飛行シーンとヒロイックな妄想に浸って、映画の醍醐味が味わえます。ただし下敷きは朝鮮戦争時代の「トコリの橋」なんだそう。いわばカバーバージョンなんですね。で。これに出てくる鬼パイロットがデフォー。暗い過去を持つ孤高の腕利き爆撃機乗りなんですが、最期は北爆禁止規定を犯してなぐりこみ。ここでもまたエリアス軍曹の焼き直し。二重カバー映画だったんだなあ。とはいえ、我々日本人の感覚からすれば、まさに東映任侠映画の世界。耐えて耐えて最期に一気に怒りが爆発するってパターン。高倉健さんが主演なら、競演して陰でささえる鶴田浩二の役柄かなあ?思いっきりカタルシスを発散できること請け合いです。
 他には、私の敬愛するデビッド・リンチの「ワイルド・アット・ハート」なんかにも出てるはずですが、どうも印象が定かでなく、「サイゴン」とか「今そこにある危機」なんかの軍人さん役が記憶に残ってしまいます。まあ、この顔でまっとうな市民の役を演じるのはちと難しかろうかと(^_^;) あとは、これも演技派の怪優ジョン・マルコビッチと競演してノスフェラチュ役を演じた「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」(灰汁の強い二人を同時に見られるのは嬉しいですが、個人的に出来は散々な映画と思います)、あるいは「スパイダーマン」の悪役グリーン・ゴブリンなど、人と野獣あるいは怪物の間を行き来してるような役がはまってるのかなあ。

2004.09.27