「飛行機モデルのファクター」

※この記事は、プラモのキャリアうん十年ないし、スタンスが確立しているかたには不要ですので、読み飛ばして下さい。

2002年4月1日 4月6日追補

 下図をご覧下さい。ものすごく単純化していますが、飛行機モデルを製作するのに、いったいどういう要素(ファクター)があるのかな?という素朴な疑問から発したものです。もちろん、「マックス・ファクター」、それは言わずもがな、

「愛」

ですけれども、、、、、(笑)
 とはいえ、それでは話が何も先に進みませんので、すべからく飛行機モデルを作るみなさんは、実機なのかプラモなのかは別にしても、愛に溢れているという前提の上で論を続けます。

 

 上図は良く広告屋が(おせっかいにも、せっかくメーカーの開発担当者が精魂込めて開発した)製品をポジショニングする(したりしやがる)時に使う方位図です。最も重要な基本工作を12時に置き、順に追加工作、デテールアップと言った工作関係、次に仕上げの塗装、ウェザリングなど、そして左側に考証関係のファクターを並べてみました。この要素のピックアップは、もちろん私の恣意ですし、定義も極めて曖昧なままなので、「異論・反論・オブジェクション」はお有りと思いますが、雰囲気は捉えていると思います。皆さまも自己診断してみて下さい。点数の基準も絶対値なんかある訳ないですから、身近な先輩や好きなライター諸氏あたりを100としてみて下さい。ちなみに赤線は私の自己診断。基本的に器用じゃなく、緻密でもないので、工作系はダメのダメダメです。塗装はなんとか最近少しは上達。考証はどーでしょねー?包括的には全然ダメ。泥縄で本見たり、くれくれタコラ状態で皆さまに聞き回る程度ですものね(^.^) しかも本物のメカとか全然分かりません。だってスケールの空ものプラモって、長いこと、各パーツは固定が真とされてきたんですもの、本物がどうやって動くかなんか、知らなくても模型はできちゃうんだもん!
 さて実は、この項で言いたかったのは、ここから先なんです。スケール・エアモデルあるいはオーセンティック・エアモデルというのは、実在するメカニズムを(それが人殺しの道具であれ、ナンパのツールであれ)、ある文法に基づいてミニチュア化したもの、な訳です。ところがですね、最近のキットはそりゃあ、良く出来ているため、基礎工作さえある程度できれば、あとは塗装が上手にできれば、そこそこ見られるレベルの「完成品」になっちゃうのです。(ここで言う「作品」「完成品」とは、前に風の友氏がこばちゃんのサイトで書いておられた定義に従っています)。
 さらにそれに加えて、緻密精密な工作を施し、実感たっぷりな塗装や仕上げをすれば、それは素晴らしいものになります。上図の網掛けした部分、すなわち3D化する技術の面で秀でていれば完成品としての見た目は素晴らしいものになるんです。考証とか小難しいことを言ったり、頭脳労働をする事など無く、かっこいい「完成品」は出来上がります事実、日本のJMCでも、世界のIPMSのコンテストでも「考証」というファクターは、評価基準には無いそうです。そう、では工作と塗装さえうまければ、それは傑作でしょうか。そうでしょうか、本当にそうでしょうか?メーカーのレシピのままの「完成品」では有りませんか?
 ここで極端な例を挙げれば、そのキットがフォッケウルフFw190だとした場合、

フォッケ190の脚が翼から垂直に生えていても、それは傑作なのか?

 その「脚まっすぐフォッケの完成品」は傑作でしょうか? または、制作者のワン・アンド・オンリーな「作品」でしょうか? 実在したFw190という飛行機はそんな無様では有りません。従って、「脚真っ直ぐフォッケ」はオーセンティックな(正確な、確実な)あるいはスケール(ある縮尺比率でスケールダウンした)モデルとは家何のです。私は、今まで幾多の、悲しい悲しい「脚まっすぐフォッケ」を見てきました。ライターしかり、コンテスト入賞者(しかも私より上位だったりする、、、笑)しかり、ウィンドーの完成品しかり、、、、。フォッケを偏愛している者の一人としては、唖然とする一方で、所詮そんなものかなあ、と寂しい気持ちにとらわれます。

 ただし、脚まっすぐフォッケが絶対に悪いのかといえば、そうとは言い切れないとも思います。なぜなら、その人には実際そう見えたからです。それは、目の訓練、知識レベルの問題かも知れないし、機体に対する興味の度合いかも知れません。また、その飛行機の遊明度、顕在の度合いにもよって変わってくると思います。例えば、真っ赤なカウリングの零戦がおかしいと思うのは我ら日本人だけであって、アメリカのアーカンソー州に住む、ジョニー・サンダース君(15歳、仮名)に取っては何の違和感も無いかも知れません。また、フォッカーD-21の尾輪が車輪なのか橇なのかどうか、私だって、全然分かりませんもの。非有名でなければ、知識レベル全体が低いわけで、大きな外形上の間違いがあったとしても、誰も分からない訳ですから、結果的には間違いが存在していない事と同意義になってしまいます。
 さらに言えば、制作方法、アプローチの方法について、正解は無いと思います。当たり前ですね、趣味なんですから、活け花の家元制度のように「○○流」はこういう活け方の作法を守らなければならぬ、なんて世界じゃないですもの。もともとイージー・アセンブリー、フール・プルーフを旨とするプラモだからこそ、ストレートに組んでパカパカ出来上がるのが楽しいとも言えますし、いにしえのキットと違い最近のキットは少なくとも他の飛行機に見えてしまうような事は無いのですから、メーカーにそこいらは全部おまかせするのも一つの見識かもしれません。また、そうではなく、世の中で私だけのたったひとつの作品を求めて大改造というベクトルを目指す方もいるでしょうし、「いいや真実は一つだ!」と、より深い考証に血道を上げるかたもいると思います。どれが正解なんて無いですよね。そいうファクターがバランス良く、しかも高いレベルに有る方を、我ら凡人は「名人」と呼ぶのでしょう。私のようにそのファクターが全て足りない小人(しょうじん)が、こうしてずるすると愚痴を並べるという訳です。
 下図は、あったり前田のクラッカー(死語)ですが、各ファクターがそれそれ少しずつ上達していけば、キャリアを重ねる内にスパイラル状に全体のスキルも向上していく、という概念図です。私はもともとずっと一人ぼっちで模型を作ってきたので、基本的には素組みで、かつ各ファクターともずえんずえん下手っぴなまま過ごし、クラブに入って工作方法を眼前で見せてもらったり、展示会を見に行って名人芸の極致を拝見したりして、数年前から少しずつ、スパイラルが上方遷移を始めたのですが、基礎がなっていないうちからJMCコンテストに出品したため、エンジンやらフラップなどレジンパーツを使ったりするギミック系に走るという(おかげで、メカやエンジンの知識なども好きですが)、ややいびつな成長の仕方をしてきました。塗装とマーキングは大好きなんで、本当は全部素組で、持っているデカールの機体をかたっぱしから完成させたい、というタイプだったはずなんですが、どっかでベクトルが定まらなくなっちゃったのよねえ。さらにインターネットの普及により、情報の洪水(その名の通りのサイトもあります)状態で、実機についての勉強もアップアップしつつ、プラモ作りをしている訳です。

 さてここで最後に、もうひとつだけ愚痴を書かせて下さい。前の図で考証の部分というのは時間がかかるものです。ここに時間を食うと、その分完成が遅くなる、または完成数が減少します。逆にここらへんをある程度で収めておく、ないしオミットして、工作や塗装に重点を置くタイプは、完成までが早い、完成数が増える、その分技術の向上も早い、どんどんうまくなるという構造になっている訳です。例え、脚が真っ直ぐなフォッケでも! それって、

ちょっとずるくな〜い(^.^)!?

 まあ、こういう話は異論もそれぞれ有ると思います。お気づきの点は掲示板にてどうぞ。2002年4月4日記


「続・飛行機モデルのファクター」

 

前記「飛行機モデルのファクター」に関し、真摯かつ常に直球勝負(^.^)のモデラー、AGRESSORさんからコメントをいただきました。(4月6日)

 最近巷で流行りの塗り方、チト疑問に思う所も有ります。ちょうど今、フォッケ(本日ロールアウト)作ってた所なんで特に思うのかも知れませんけど、"フォッケ(でもマスタングでもコルセアでもファントムでも良いけど)ってのはどんな汚れ方をするヒコーキなのか"ってのより、模型としての"見栄え"でカッコイイ方がメディア受け(笑)するのかしらん。。。

"そこは木製だから金属色のスレハゲは無いだろ!" とか
"下面で褪色も殆どしない部分にチョーキングって有り?" とかあるけど(^-^;
胴体側面は排気の煤汚れバッチリなのに、下面の排気管の周辺は綺麗とか。

σ(^^)には気になるんですよん。

ウェザリングの"技術"は優れているのかも知れんけど、その機体はどの様な汚れ方をするのかと言う点には無頓着に思えてしまうのはσ(^^)だけですか?

 そうですねよね、3Dの部分には表側の2Dの部分、つまり塗装やウエザリングも含まれるわけでして、それをいわゆるガンダム塗り(AFVとの二刀流の方や、ハイパー一派、あるいはも最近そうです、、、笑)で全部済ましてしまうのはやはり、「オーセンティック」では無い、リアリズムではない、お手軽な方法ですね。しかし、実物を知らない我々(まあ米軍基地や自衛隊の基地で現用機を間近に見れば有る程度は分かりますが)が、追求しようととなるとこれまた、楽しい反面、大変な知識と技術、双方を必要とすることも事実。戦車屋さん達は、固有の機体のマーキングや装備、塗装などw割り切らざるを得ない反面、ジオラマを作るとなると、並の飛行機モデラーの知識じゃあ済まない、周辺知識を必要とするのだろうと思います。それから、想像力とかね。手だけの方々って、この「想像力」が決定的に不足している場合が往々にしてありますね。上図の右側だけで済ませてしまう人たち。

 

 正編でも書きましたが、ある種の手法、例えばリベット打ちとか、暗色下地塗装とかを覚えると、上図左側の考証部分無しで、ある程度カチッとした完成品が出来る訳ですから、総エネルギー量(=プラモ積分C)は半分で良い(上図右側)ので、とっても楽なわけです。スケール、オーセンティック・モデルを突き詰めれば、二番目の図右側のように、知識と技術が渾然一体となって、段々スパイラル状に高い次元に上がっていけば理想なのでしょうが、これがなかなか難しいんですね。


<関連記事>

■46 飛行機モデルのポジショニング(2002.3.3)

■58 飛行機モデルのファクター(2002.4..4 4 .6追記)

■59 飛行機モデルのプロセス(2002.4.7)

■60 飛行機モデルのメジャー(2002.4.8)