2003年静岡ホビーショー合同展示会に、「フェイク・エアクラフト・ベース(偽物飛行隊基地)」として、RAFコンを招致した形で特設ブースを出展しました。
さて、この特設ブース、さすがに全国の同志が集まっただけあり、自画自賛でなく、魅力たっぷりのコーナーとなりました。その中身や顛末はフェイクベースの項に詳細を譲るとして、ここでは、この特設ブースと、他のサークルの展示と何が違ったのか、あるいは個人的には通常のサークル展示より魅力的に映ったのか、お馬鹿なアナロジーを思いつきました。
と同時に、静岡展示会で最終日のそろそろ撤去間近という時間に、RAFコン主催者のお一人、taka-miuraさんとつらつら雑談がてら来年の話をしてきた時に出てきた「根元的な問い」に対する、回答一歩手前の状況説明でもあります。
RAFコンは未定ながら、主催者も、もうお一方IKEさんもいることだし「継続は力なり」方針で望むようですが、フェイクに関しては少なくとも私はウェブコンの第二弾は全く考えていません。ただ、せっかくこうして集まった全国のウェブモデラー、しかも洒落も分かる知的水準も高いイイ大人達のネットワークがこのまま終わってしまうのでは勿体ないので、少なくとも私が「フェイク・ロンリーウルフ」と呼んでいる非組織化モデラー、平たく言えばサークル無所属の方が、静岡合同展示会に出展できるための(個人参加は規約で不可なんです)ユニットあるはプロジェクトとしての存続は有りかなあ、とtaka-miura氏に言ったわけです(ロンリーウルフも集団になれば、ウルフパックですね。56FGのゼムケズ・ウルフパック。これが始動すると、ラン・ウィズ・ザ・パック、ってこれはバッド・カンパニーのアルバムタイトルです。閑話休題)。すると、taka-miuraさん、サークル側の通常ブースを指して、「あっちは、一体何なのです?何のために模型が飾ってあるのですか?」と仰ったのです。これが先に書いた「根元的な問い」です。ここで注釈を先に入れておきますと、taka-miuraさんは確かいわゆる出戻りモデラーさんで、日本国内の模型専門誌や既存サークルなどに全く無縁の正真正銘のロンリーウルフ。対する私は、「遅れてきた」とはいえ、モデルアート誌は1972年から、ホビージャパンも1973年から読み始めた、正統的(^_^)プラモ中年です。当然、最初はtaka-miuraさんが、一体何のことを仰っているのか、私には全く理解不能でした。数分間やりとりをして、おぼろげながら判読したのは「フェイク/RAFブースは、一定のテーマに則ったコンテストを開催、その受賞作品の発表の場である。従ってそこには、明快なミッションとテーマ、レーゾンデートルが存在する。同時にミッションに即して、観客にちゃんと分かるようなプレゼンテーションを行っている。対してあちらのサークルブースは、来場者が見ても何が何だか分からないのではないか?卑近な例で言えば、零戦しかしらない人にトーネードを見せても『けったいな飛行』、と思うだけで何の興味も湧かないであろうし、まして感動させるなどもっての他ではないか?では無目的に展示することに何の意義があるのか?」ということでは無かったのかな、と推測をしました。帰京後、この件でtaka-miura氏とは話をしていないので、ご本人の意図とは相違があるかもしれませんが、どっちにしろ、長く日本の飛行機模型の「べき論」「プラモ道」に沿ってきた私とtaka-miura氏では、立っている地平が違うのですから、翻訳はできない相談なんですけどね。ですから私の解釈が180度違っている可能性も大です。
そこで、その「根元的な問い」に対する回答一歩手前の状況説明ないし、「ラン・ウィズ・ザ・パック」の正当性の補強として、アナロジーにて代用しよう、ということでも有るのです。さてそれは、
- フェイク・エアクラフト・ベースはジャズやロックの♪ジャム・セッション♪である
- 通常のサークル展示はクラシック音楽の♪ピアノ・リサイタル♪だ、つーものです。
フェイク・ベースは、フェイク・エアクラフト・モデリングというコンセプトに共鳴した全国の有志が一同に会して、「せえーの、ワンツースリーフォッ!」で始めたジャム・セッションみたいじゃないか、と思う訳であります。ミュージシャンは、各々ベース、ドラム、ギター、ヴォーカル、サックス、ピアノといった得物は異なれど、最初のテーマだけあって、後はみなその場の雰囲気と空気感・ノリを感じ取って、丁々発止のフリーな掛け合いを続けていくのですね。これは緊張感はあるは、各自の引き出しから色んな音や音のルーツが垣間見えるは、ライブならではの楽しさに溢れたものになる訳です。ただひたすら楽しいから、というミュージシャンの生理的な欲求に裏打ちされた土壌の上で、メンバーが一丸となって、あるひとつの高みを目指す構造です。その間にはドラムバトルやギターバトルなど腕達者同志の掛け合いもあるし、時々観客席から飛び入りが参加したり、覆面での大物参加が有ったりもするしね。 模型に置き換えれば、現用だ一次大戦だといった様々なジャンルから参加し、塗装一発や大改造、うんちく系など表現力も様々なモデラーが、ひとつの時間と場所を共有していく楽しさ、ということなるでしょうか。リスナー(来場者)もこういったイベントには、おのずとわくわくしちゃいますよね。共通テーマという一本の糸では繋がっているけれど、本来的には個人個人が自由な表現を可能にする、これが魅力的でなくで何でしょうか。やっぱりジャズとかロックのような、規範の緩い、本来何でもありの世界の演奏形態ですよね。ただしこれ、一期一会の世界でもある。2003年5月17,18日という時間と、静岡という場所は、二度と共有できないのです。
一方、リサイタルとは和訳すれば独演会です。ピアノならピアノ(現用ジェットなら現用ジェット)という楽器(ジャンル・分野)内で、過去の名作曲家の名曲(キットですね)を、どうアレンジして自分流の表現で見せるか、あるいはテクニックの凄さを出していくか、それが醍醐味な訳です。ワーグナーなら、ワーグナーという偉大な作曲家が書いた曲を、どう料理するか。下手くそなうちは、まず弾きこなすだけで精一杯、バイエルの赤本から始めて、だんだん表現力が付いてくれば、演奏者ごとの個性がやっとて出てくるわけですが、そのためにはそれを可能にするテクニックを日々練習して身につけなければいけません。また演奏技術の優劣をはかるコンクールといった型式も有ります。さらにワグナーを理解するなら、やはりルートヴィヒ2世とか、ニベルンゲンの指輪とか、歴史・文化への造詣も深めないことには表現も深まっていきません。考証ってやつですな。さて先人には名盤・名演奏と言われるもが多数有り、それをどう凌駕するか、あるいはちがう解釈を施していくか、それが演奏者(モデラー)の面白さであり、また困難さでも有るわけです。サークルサイドでの模型の展示は、実にクラシック音楽の世界に近いと思いませんでしょうか。サークルにより、個人のピアノ教室のように生徒さんの作風が全員一緒だったり、発表会には統一課題と自由作品が有る、なんてえのはヤマハ音楽教室みたいなもんです。さすがに最近は年齢層が高いので、町場の模型屋に小学生が群がった時代の名残りのような、こういう課題機とか課題メーカーを定めるようなサークルは前時代的に過ぎるでしょうが、それでもゆるい規範が設けられている場合は多いですね。さらに観客側ですが、これはある意味とうしろじゃあ、つとまりません。ディズニーランドじゃないので、作曲家、演奏者にたいする最低限の知識や、耳の育ち方をしていなければ、見聞きしてもちっとも面白くない、聞き巧者、見巧者であることが要求されます。オペラやフルオケはチケットが高いですから、それを買って聞きに行こうと思うのは、当然その道が好きな方ですよね。模型の展示会に置き換えても、入場料こそ普通ただですが、博物館じゃなし、アマチュアがやる催しなので、丁寧できちっとしたディスプレイやプレゼンテーションの習慣が無いため、基礎知識が無ければ素通りせざるを得ないです
これ、もちろん、どっちがいいの悪いのって話じゃありません。どっちも有り、どっちも好きです。ただ今までは、ことスケール・エアクラフト・モデルにおいては、クラシックのリサイタルというアプローチしか無かったのでは、と愚考するものであります。オーセンティック、つまりスコアに従って演奏するということ。展示会の場合は、演奏曲目が課題として決まっている(例えば『銀色の飛行機』とか『グラマンの機体』とか)こともあるので、リサイタルというより、コンクールに近い面もあるかもしれませんね。ジャム・セッションやバンド型式(フルオケないしは室内楽のカルテットでも)に当たる、飛行機模型の展示方法は多分無かったでしょう。AFVのダイオラマばやりというのは、スコアの忠実な再現性という尺度以外に、表現の幅の広さに対する欲求が根底にあるからこそ、でしょう。飛行機のスケール・モデリングでも、自己表現の衝動を昇華する方法論が、クラシックのリサイタル以外にももっとあってもいいのかな、と思う次第であります。もうひとつアナロジーを。
- ウェブコン=スタジオ盤
- 展示会=ライブ演奏
ウェブコンは、キットを制作して出来た完成品をロー・マテリアルであると認識し、これにスタジオでオーヴァーダビングしたり、SEを施したりしていく、スタジオ録音アルバムみたいですよね。ミュージシャンの資質だけじゃダメで、優秀なプロデユーサー、ミキサー、エンジニアの資質が無いと、面白い見せ方はできません。一方、展示会での現物展示は、画像では誤魔化せた粗も一発でばれちゃう怖さがあるけれど、やはりもともと3Dの物体は3Dでないと伝わりませんから、情報量はずっとずっと豊富です。ウェブ(スタジオ)では生の息吹が感じ取れない。ということは、展示会はライブ演奏ですよね。スタジオでみっちりしたプロデュースをしてるバンドが、実はライブではこんなに暴れてる(ラフだった)みたいなほうが、良い意味での裏切られた落差の感覚があって、楽しいですね。えー、レッド・ゼップのライブ映像DVDが6月に発売されるので、アホらしいアナロジーでお時間を頂戴してしまいました。
最後に。よっぽどのあまのじゃくで無い限り、自分が作ったものはどんな形であれ、誰かに見せたい、見てもらったら嬉しい、四の五の言わずとも、そんな素朴な初期衝動があれば、展示会なんて十分なんじゃないでしょうか。(2003.5.30)