単なる思いつきです…。
2004年になって突然人気のNHK海外ドラマ「冬のソナタ」。http://www3.nhk.or.jp/kaigai/sonata/
なかでも、5.60代の奥様方が熱い視線を浴びせているのが主演のぺ・ヨンジュン様。私は、たった1回、それも20分程度しか見たことが無いのですが、マスメディアでの論調は、「20年ほど前の日本のドラマ、特に山口百恵・宇津井健主演の紅い〜シリーズなど、いささかマンガチックになほど、主人公に苦難と悲哀が襲いかかってくるという懐かしいパターンを、現代の韓国ドラマが再現していることが、アクティブ・シニアの奥様方に人気の原因」というようです。私は「紅い〜」シリーズも見てないので、この論には何もコメントできませんが、さもありなん、とは思います。最近の連ドラはM1向けばっかり、シニア向けは2時間ドラマのご当地ものか、家政婦や女検事、女検死官とかばっかりで、若かりし頃のハーレクイン風な甘酸っぱい恋心をくすぐるドラマが無いところに、お隣韓国から、どんぴしゃのドラマがやってきた。でさらに、ぺ様の「母性本能くすぐり系」の容姿がこれに輪をかけたのでしょう。
ベトナムへ旅行した団塊世代以上の方が、日本にはもはや失われた、「美しくもほっとする田舎」を再発見して、はまってしまう、というパターンを良く聞くので、40代の私には実感が無いものの、なんとなく納得してしまいます。さて、こっから、私の稚拙なアナロジー。「冬ソナ」のおぢさん版が、2004年バージョン「鉄人28号」なんじゃなかろうか?と。http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/28/main_index.html
このアニメ、昭和30年代原産の鉄人28号を、21世紀の技術論でもって再現しています。いや、再現というのはふさわしくない。職人肌で、人間の機微を深く描くことをしない横山光輝氏(合掌)の原作を、製作者の皆さんは、完全な確信犯で、「父と子」というモチーフでより悲劇の様相を付加して、思わず泣けるドラマにリビルトしてあるんですから。
こども時代、私は圧倒的に手塚治虫の「鉄腕アトム」ファンでして、あっさりしてコクの無い鉄人にはさほど思い入れが有りませんでした(後年のバビル2世なんかのほうが、SF的興味で好きになった)。ところが今回の「鉄人28号」は、私の世代では雰囲気も良く知らない「まだ戦後の日本の匂い(下山事件とか労働争議とか)」を背景に、戦争の負の遺産である兵器技術と、それにまつわる悲劇や人間も模様を描き出しています。さらにとどめは、先に述べた親子愛。鉄人28号が正太郎君のお父さん、金田博士が正太郎君が死んだと思い、ピュグマリオンとして残した分身、すなわち息子であるならば、不乱券博士においては、それがモンスターであり(しかもモンスターの場合、実際に脳は息子そのもの、という原作には全く無かったと思う設定が加えられている)ドラグネット博士においては、超人間ケリーであり、まるで原爆の生みの親、オッペンハイマー博士が人類に抱いた贖罪の心を、親と子に濃縮したようなつくりになっています。しかも敷島博士を含め、彼らは皆、戦時中同じ釜の飯を食った同僚であるという設定です。今回の鉄人では、もはやかつてのスター、ブラックオックスやバッカス、ギルバート、さらには鉄人28号も含めた巨大ロボットはもはや脇役でしか有りません。そうなんです、私らやその上の世代がこども時代に憧れたロボットを狂言廻しに使いつつ、プロジェクトX的な時代へのノスタルジーと、おやぢ達の多くがイコール父親であるという部分への共感を呼び覚ます、実に周到なアニメ作品だと思うのです。これはおやぢ達への冬ソナといって差し支えないんじゃないかなあ。今風のアニメの在り方はそれはそれで輻輳化、多様化、深化していて評価するものですが、鉄人のこの手法論とそれを可能にした製作陣の真剣さ、技術力、マネジメント能力(いやだって、こんなつくりの番組によくスポンサーつけたなって、、、笑)には感心いたします。今まで多くの旧作アニメのリメイクが有りましたが、鉄腕アトムにしても、ここまで原作のモチーフを素材にプロの水準の腕で料理し直した作品は無かったように思います。ハリウッドでも、スパイダーマンやハルクなどリメイクが多いですが、ティム・バートン監督のバットマン以外には、これという作品が無いと思います。さあ、ロビーや砂漠の怪ロボットの巻なんか、はたしてどう料理してくれるんでしょうか、今から楽しみです。2004.06.13