「飛行機モデルのメジャー」

※この記事は、プラモのキャリアうん十年ないし、既にスタンスが確立しているかたには不要ですので、読み飛ばして下さい。

 前記「飛行機モデルのファクター」内の例題「脚の垂直なフォッケ」に関し、真摯で常に直球勝負(^.^)のモデラー、AGRESSORさんからコメントをいただきました。


「垂直なフォッケの脚、IPMSコンテストルールの場合は、"ディメンジョンの不整"と言う事で、基本工作技術の減点項目に当たりまする。

どこまでが一般常識かは問題ですけど、インストに出ている範囲の事の誤りは、考証以前の問題と言う事で。

考証ってのは、例えばMe262で、特定のマーキングの機体で機首ガンベイの小さなバルジの有る無しとか、P-51Bで特定のシリアルの機体ではアンテナの形状が異なるとか、そーいったレベルの話と考えて頂きたく存じますm(__)m

"この機体にここのエアスクープは有るか〜" ってツッコミは無しと言う事で。
たとえば、水平尾翼にバキッと上半角のついたMe109とか、水平尾翼の下半角が少ないファントムとか、主翼上半角が左右で違うとかってのも、Basicな問題として捉えて良いのでは無いでしょうか。

ファントムの水平尾翼も、本当に水平に近い・・・・言い訳程度の下半角しか付いていない作品も多々有ります(/_;)


 いや実に明解ですね。アメリカは他民族国家で、イギリスやヨーロッパ各地から移民が中心にいるとはいえ、先住民族やアフリカ系アメリカ人、スペイン系など民族や言語が多岐に渡っており、共通文化が無い故「マニュアル」が発達した、とこれは教科書ではなく、矢作俊彦作・大友克洋画「気分はもう戦争」でソ連のT-54?を運転できるか否かという話で勉強しました。
 しこうして、プラモデルの世界にもかの国には、少なくともコンテストのルール・ブックは存在するのだそうです。在米経験のあるモデラーAGRESSORさんがしばらく前に、IPMS(International Plastic Model Society)のコンペティション(=競争、競技)規定集(PDFファイルへのリンク)を和訳されました。これを読んだら、目から鱗状態。これを読んで、どう感じるかはもちろんあなた次第ですが、コンテスト・ハンドブックなので当然、まず最初は「プラモとは何か」という定義を踏まえている訳で、そこそこキャリアの長いモデラーでも、結構考えることが多いと思いますよ。我が国では、多分コンテストへの応用以前に、共通言語的に使用できるのじゃないか、とそう思うのです。

 まず強調しているのが、「基本」「調和」です。
 
「基本」とは、1.基礎工作技術、2.デティール 3.塗装と仕上げの各フェイズにおいて、部品の継ぎ目を取り除いてあること、アラインメントたとえば主翼の上半角が左右均等であること、外装品は本体と同等のレベルで仕上げてあること、鮫肌が無いこと、など具体的にチェック項目が20項目提示してあります(コンテストではこれらの項目をクリアしていない完成品は減点されていくそうです)。
 「調和」とは、ウェザリングを上面しか施さず、下面は基本塗装のままだとか、エンジンなどデティールアップパーツを組み込んだのに、機体外形が素組みでエンジンパーツを見せるための飾り台にしかなっていない作品など、アンバランスなアプローチはいかんのよ、ということです。
 またAccuracy(正確さ)という項で、「完璧な正確さは尊いものであるが、恐らくは辿りつけないゴールである。」と看破しています。またここでは、「正確さ」は地雷原だ、とも書いてあり、前進翼のF-86のようにゾっとする不正確さは一目瞭然だが、F-4ファントムの通が、カナダのCF-100について詳しく知っているとは限らないので、「些細な」考証上の誤り以前に、模型としての「基本」を優先すべし、だそうです。また、例えば考証上完璧でも、継ぎ目が見える作品をマイナス評価した場合、審査員も自分と同様の知識を持っていると信じ込むモデラーから審査員が攻撃されることはしばしばあるそうです。こんなところは海外も日本も同じですね(^_^) 私が例に出した「脚真っ直ぐフォッケ」は、この項目のボーダーラインなのかしらん? あGGさんは、その前に「基本」工作技術の項で減点!とおっしゃっていますけど。

 私自身にあてはめてみると、まずこの「調和」がダメのダメダメです。2000年のJMC出品フォッケ夜戦は、エンジン内蔵、カバー可動というギミックキットでしたが、塗装や仕上げのもう一歩がやや不足し特別賞止まりでした(ただしパンピーには受けなくとも、通受けはしたと自負してはいます)。近作のメッサーWなんかは大がかりな改造に足をすくわれ、仕上げのレベルのとっても低いことは目を覆うばかり。このIPMSコンテストルールには、悪い例として、先のフォッケのように考証バッチリで、ギミックもあるのに何でこんな評価?とぶうたれていた私のようなモデラーの話も、しっかり出ています(^_^) つまり、それ以前のファクターを犠牲にして、ある見せ場を持たせる程度の技量なら、コンテストに出すには不足なんですね。当時は私もそれが分かっていなかった面もあります(しかし一言、言い添えておきますが、JMCの審査がIPMSのように、講習を何度も受けた審査員によって行われている訳では全くないし、多分選択の共通基準無しで、審査員の印象による好き嫌いや、見かけの点数制で行なっていることもまた事実です)。逆に言えば、破綻の無い落ち着いた作品ほど難しいものは無い、ということでもります。最新のタミヤもキットと簡易インジェクションのA-Modelのキットを、同じ程度で仕上げる技量、なんていうのは、とってもすごいことだよ、と。

 各論はぜひPDFファイルをプリントして読んでいただくことをお薦めしますが、とにかく言いたいのは、あいまいな我が国の飛行機モデル界(んなもんが有るのかすら怪しいですけど)と違い、少なくとも米国では基準、メジャー、土台、スケールという最低限のルールを提示しているって事実です。ご存じですか。先進国でIPMSの存在しない希有な国、それが日本なんです。日本のモデラーは、口うるさくメーカーに注文をつけたから、日本のメーカーの製品水準が上がったと言われますが、共通言語が無いまま議論(というか、批評以前の無自覚な批判)ばかり横行してきたのかもしれず、これはメーカーも過大な負荷を担ってきたかもしれないし、モデラーも鬱憤がたまっていたかもしれませんね。そこで、その一部(にして根幹を成す)「基本」のみ書き出してみます。また、ベテラン諸氏でコンテスト出品を嫌がる向きもありますが、明快な基準が無いから、あの俺より下手な審査員に審査されるなんて、まっぴらゴメンだ、という気持ちが強いんじゃないでしょうか?メジャーがあれば、腕が下手でも見る目は補えない訳では有りません。


Modeling Basics lPMSの定義する”基本”とは

Aircraft 航空機
Basic Construction基礎工作技街

1.パリ、部品の継ぎ目、ヒケ、著作権マーク、突出しピン跡やその他のモールド上の欠点は取り除かれていること。
2.部品の継ぎ目は、それが実機に無い物であれぱ埋められ判別出来ない様に成っていること。
3.外形上の明白な誤りは修正されていること
4.外形の誤りの修正や継ぎl目の整形等で損なわれた表面ディティールは他の部分と遵和感無く再現されていること。
5.アライメント
A)主翼や尾翼では上半角あるいは下半角は左石で等しいこと。
B)平面形では主翼や水平尾翼は正しく位置決めされ、機体の中心線を挟んで両側で対称であること。
C)垂直尾翼やフィン等と水平尾翼は正しい角度で接し前後及び左右から見て不均衡が認められないこと。D)ニンジン.ナセル.カウリングは正面、側而及び平面形で等しく揃っていること。
E)脚は上下左右、前後から見て適切な角度で機体に取り付けられていること。
F)外部装備品は装備品客々と機体の位置関係が適切であること。
6.風坊.キヤノピや他の透明部分について
A)透明で、接着剤や塗料等で濁っていないこと。
B)風防やキヤノピと機体、あるいは透明部品相互の隙間が無いこと。
C)全ての透明であるべき部分には傷やョゴレや(はみ出した)塗料が無いこと。デカールは実機で塗装されたマーキングでは塗装されている様に見えること。即ち、外形に馴染み、シルバリングや気泡が無く、透明フィルム部分が目立たないこと。

デイティール

I.分厚い部晶は薄く修正されるか置き換えられること。具体的には各翼後縁や外部装備晶のフィン、脚収納部ドアの縁や閉状態のパネルの縁等は薄く仕上げられているべきである。
2.脚収納部や空気取り人れ日、各種取り人れ口等から透けて見える(シースルー)事が無い様に塞がれていること。
3.砲身や排気管.空気敢り入れ口、各種ベント類等の開口部は開口されていること。
4.追加されたデイテイールはスケールに見合った大きさであること。
5.外部装備晶は機体自身と等しい水準に仕上げられている事。外部装備品や武装の組み合わせは、実機で存在し得る組み合わせであること。
6.市販のデイテイールアップパーツ(フオトエッチング、ホワイトメタル、レジンキヤスト等)はモデルの中で違和感無く使用されていること。フォトエッチングパーツで折り曲げたり加工が必要な物は適切に加工されている必要がある。これらの部品の表面で厚みを持った断面の部品はその様に仕上げられているべきである。

塗装と仕上げ

1.モデルの表面の塗装を通して接着剤のはみ出しやヤスリ傷、指紋、隙間や裂け自、表面素材感の不一致等が認められないこと。
2.塗装面は均一で平滑であること。もしも実機がデコボコとした表面を持っていてモデルでそれを再現した場合は、その旨の説明書きを付け加えること。
A)筆目や糸屑、筆の毛等が表面に見られないこと
B)柚子肌、鮫肌の部分が無いこと。また、主翼付け根フィレット部等に塗装面の粉吹きが無いこと
C)クリアーコートの吹きムラによる筆のムラが生じていないこと
3.キッチリと塗り分けられるべき境界線はキッチリとしていること。境界線が縒れていたりはみ出したりしないこと。ぽけたりにじんだりしている塗装の境界部はスケールに見合ったポケ幅で再現され、はみ出し等が認められないこと。
4.透明部品では窓枠の塗り分けはスッキリと均等に塗り分けられていること。
5.
ウェザリングを適用する糧合は、スケールに見合った表現で(塗装のスレハゲ等)その実機が使われた状況に合致しモデル全体で続一感のある仕上げがなされること(工場から出たばかりの様なピカピカのコクビットや卿部で、100回出撃したように褐色した航空機はあり得ない
6.デカール
A)歪まず適切に位置決めされていること(もし実機が通常と異なったマーキングを施している時にはモデル制作者は説明書きを添付して実繊で誰か他の奴がやった間違いを再現しているのであって、制作者自身が迂閣な奴では無いと言うことを説明しなければならない)
B)現用航空繊の中には塗装の代わりにデカールでマーキングを施している物があり、もし実機がその様なデカールの誤りがある希合はモデルでそれを再轟した時も同繊に説明書きで述べること。
7.塗色は例え同一の塗科製造業者が同一のスベックで製造した物であってもパッチにより色調は異なる事がある。異なった使用環境では異なった色目に変色してしまう。全ての塗料は転向や日光の影響で褐色する。また、クローズアップと遠景では同一機の同一塗色でも異なって見える事がある。工場での塗装の仕上げの品質やその後の整備の具合でもこれらば異なる。それ故にとてつもない間違いの場合を除き(例えば、ライトグリーンのレッドアローズBAEホークとか)色調の細かな相違はそのモデルの正確さ、不正確さを決定付ける物では無い。但し、通常と明らかに異なる色のモデルは説明書きでその旨説明されなければ成らない。


 大変明快に「基本のキの字はこうなんだ」、と述べています。概ね当たり前のことばかりですが、それは明文化されたものを読んだからですゾ。頭の中でこれ全部、同水準で思いつくことは無理でしょう? こういう最低限の基準が有れば、建築図面や機械製図ほどの共通言語とは言えないまでも、各サークル間の方言やローカルルール、個人の情念だけから来る思いこみ、とは一旦離れて、同じ土俵での会話が出来ます。先頃、一勧や富士などが合併して出来た、みずほ銀行のATMが誤作動してましたが、銀行の商売の基本や、システムの基本は同じなのに、日本では同業界内でも方言のハードルのほうが大きすぎる、あるいは相手の方言を理解しようとする発想が全く欠如しているのです。これは欧州もかなり似ているらしいです。なぜなら民族の歴史はうん千年、企業だってうん十年で固有の文化(もしくは文化もどき)が出来てしまうから、ある意味仕方無いらしいです。アメリカは歴史に飢えてる位だし、多民族国家なので、こういうプラグマテイックなツール開発に長けているのでしょうね。

 実はは本当に偉いのは、この「基本」を定める前のスタンス論なんですが、「あまねく通用する基準は、実は存在しませ〜ん」とのっけに唱っているんです。そりゃそうですね。共産党一党独裁じゃないんですから。その前提の上で、コンテスト運用にルールがいるから便宜的に設定したんだよ、時代や地方で絶えず更新していくものなんだよ、んでもって考えるのはあんたなんだよ、と教条主義でないことを主張しています。あうんの呼吸、目で会話する、技は黙って盗め、という葉隠れの極意(いや、ホントは知らないんですけど、、、笑)もいいですが、こういう最低限の共通言語の無い弊害のほうが大きいじゃないかな? 少なくとも、相手の為を思って(向上してもらいたいために)行う助言が、批判やねたみと取られるような、悲しい事態は避けられるのでは無いか、と愚考する次第です。(2002年4月8日記)


 さてここまで書いた後、気が付いたのですが、上で言っているメジャーとかスケールとかは、あくまで、模型を製作する「ハード面」に限定しての話でした。どうも私自身も、私のまわりの方も、これを混同したまま、かみ合わない話をしてきたように思います。結局、いくばくかでも測定出来るのは、技術面だけです。ソフト面、これには先に書いた考証も含め、プレゼンテーションのアイデア・方法論(ジオラマなども含む)、機種選定やら、そのモデラーも個性を発露する部分の大半が含められるはずです。こっちは測定なんできません。しかし今まで、ソフト・ハードの捉え方がごっちゃだったので、純粋な批評(変な言葉ですが)をしや積もりでも、ソフト面まで批判された、すなわち、人格まで否定されたように受け取ってしまいがち、だったのでは無いでしょうか? かといって、「趣味は自由だから、どうだっtいいではないか」で、全てこの手のことに対する相対化を全部シャットダウンしてしまっても、全然一般化とかに繋がらないんじゃないと思うのです。思考の放棄です。確固たる基準やスタンスが出来上がっているベテラン諸氏にとっては、そんなことはどうでも良いのでしょうが、組織に属さない、ウェブでも群れないような出戻りの方、初心者の方など、なにか拠り所があってもいいとも思います。

  • 実機考証
  • 歴史考証
  • メカニズム検証
  • 演出・プレゼンテーション(ベース、ジオラマ、ビネット)等々

※個々人の個性・感性の発露する定性的な部分。定量化不可能。

  • 基本工作
  • デティールアップ
  • 改造
  • 各種マテリアル技術、等々

※一応、メジャーを当てられるはずの領域

 ただしこのハード面の競い合いが苛烈化してしまうと、きっといにしえのPPC(プラ・プレーン・コンテスト)の二の舞になってしまうんでしょうね。私はその当時のことを実体験としては知りませんが、ベテラン諸氏やJMCを主催するハセガワの方々にとっても、どうやら大きなトラウマになっているようです。最後は超絶技術コンテストと化し、メーカー詐称までして賞取り合戦になってしまったとか。
 しかし、組織内で切磋琢磨したり、互いに高めあっていける環境に無い、ひとりぼっちのモデラー諸氏にとっては、コンテスト出品により、漠とした相対位置関係を把握したり、他人に作品を目にすることは貴重な機会だと思います。静岡のホビーショー合同展示会の熱いのりもとっても貴重ですが(だってJMCコンテスト発表会場の静けさとは全く対照的ですもの!)、ただし、あれは現在では前提として一匹狼では参加資格が無い。群れることを拒否している限り、観客にしかなれないところが残念ですね。私は長い間、模型仲間が居なかったから特にそう感じるのかも知れませんけれど、、、。

(2002年4月10日追記)


 まあ、こういう話は異論もそれぞれ有ると思います。お気づきの点は掲示板にてどうぞ。


<関連記事>

■46 飛行機モデルのポジショニング(2002.3.3)

■58 飛行機モデルのファクター(2002.4..4 4 .6追記)

■59 飛行機モデルのプロセス(2002.4.7)