フランス人監督では、リュック・ベンソンという、「オタッキーなんだけど明るいエンタメ大好き」監督がいて(最期の戦いとTAXIの落差を見よ)、ハリウッドのステレオタイプなアクション映画とは味わいが異なる作品を産みだしてきましたが、「ジェヴォーダンの獣」(クリストフ・ガンズ監督)はSF怪奇オカルトミステリー&アクション映画。あくの強いいささかマンガチックなキャラクターが満載で、謎解きもわくわくするし(といっても薔薇の名前みたいなしつこさは無い)、カンフー&ワイヤー・アクションもあり、ストーリーも二転三転ありで、実に楽しめました。落ちは、日本で言えば「平家の落人」「蝦夷に渡った源義経」みたいなやつの欧州版で、ちょいと安易ですけど(つまり○×十字団ね)。俳優もサミュエル・ル・ビアンが薄っぺらい二枚目をうまく演じているし、ヴァンサン・カッスルが捻れた性格の配役を楽しんでるし、「イタリアの薔薇」モニカ・ベルッチは、この手の配役以外は無いのか!=謎の娼婦役(マトリックス・レボリューションズでは、謎の愛人役だったし)がぴったんこ、豊満なプロポーションを誇示しています。また、インディアン、もとい先住アメリカ人の従者マニがチョーかっこいいです(この人主演の池上遼一の漫画を映画化した、「クライング・フリーマン」の映画を見てみたいものです)。主役?の野獣のデザインは、マペットでお馴染み、ジム・ヘンソン!
そういえば、私がこの作品を好きなのは「森が主役」の映画だから、でもあります。ヘルツォークの「アギーレ神の怒り」は、アマゾンのジャングルの暴力が主役だったし、ドイツの黒い森は、シュールレアリスムの画家マックス。エルンストの終生のテーマでした。また往年のイタリア映画の怪作「野獣暁に死す」(アントニーノ・チェルビ監督 仲代達也が悪役で怪演)を少し思い浮かべたりもしました。監督がマカロニ・ウェスタン・ファンだそうで、欧州の森と東洋人の組み合わせは、影響受けていそう。それにマカロニの影響といえば、濃ゆいキャラクター、凝った演出、深い味わいがありながら、あくまでB級テイストを持ったエンターテインメント映画だっていうところなんですね。
カナダ映画といっても、ヴィンチェンゾ・ナタリさんがフランス語圏の監督なのか、実は私、全く知りません。突然正体不明のハイテクな四角い部屋に連れられた人間達が、ゲーム感覚の罠を切り抜け、密室パニック&心理劇を演じていくというもの。前提とか、落ちとか、ハリウッド映画では短時間に必要かつ十分に説明される(された気にさせられる)ような安心感が全くなく、シュールで不条理なままどんどん進行してしまいます。しかも凶暴性を次第に露わにする人物との対峙は少しホラー映画(ジャック・ニコルソンのシャイニングほどじゃないけど)っぽいのですが、シャープなメタル感と清潔な直線で構成された画面は、実に現代的です。予定調和的でない不安感を持って(というか、観客のポジショニング、スタンスが実に不安定なのが落ち着かない)映画というのも、ハリウッド映画では考えにくい展開でした。ただし、これの続編?である「CUBE2」はアメリカ映画でCIAとかでてきちゃう、実につまらない駄作ですので、お気をつけあそばせ。
こちらは少し古い作品。なんとかいう撮影技術によって異様なほどデティールが詳細に映り、一見ラース・フォン・トリアー風の黄褐色の映像にもかかわらず、非常にクリアに見えます。また屋外の庭園などは疑似3D映像のごとく、遠景と近景が妙に分離して極端な遠近感を醸し出しています。で、中身なんですが、良く分かりませんでした(^_^;)。ヴィドックという探偵はフランスでは明智小五郎みたいな有名人らしいのですが、外国人にとっては敵役の仮面の男と最初区別も付かないので、ストーリーになかなか没入できませんでした。いっぽう展開のスピードはジェットコースター並なので、???のまま飽きることはない仕掛け。ジェラール・ドパルデューというフランスを代表する俳優さんがヴィッドック役を演じていますが、好きな人では無いので今まで知りませんでしたが、こんなに「中年でぶ」だったんだ!?その割に唸り声をあげて大立ち回りを演じるのはさすが。我が国の時代劇の北王路欣也とか萬屋錦之助などの殺陣はもっとパターン化してますよね。なんにせよ、この映画も映像美とスピードの映画であって、それ以上でモ以下でも無いようです。
「ザ・セル」 制作がどこの国か分かりませんが、監督はインド人。脳内科学とビジュアルショックを楽しむ映画。石岡暎子の衣装とシュールでグロな舞台美術は凄い、いにしえの寺山修司の映画や舞台を今に蘇らせた感じといえば、いいでしょうか。しかしストーリーが弱い(精神世界と現実のサイコ野郎との落差が平板なのと、話の展開が雑)のと、個人的に主演女優のジェニファー・ロペスがイマイチ!
仏「ティコ・ムーン」 これも結構昔の作品。フランスのコミックであるBD(バンド・デシネ)の第一人者エンキ・ビラルの監督作品というので期待したんですが、なんかピピっと来ませんでした。絵はシュールできれいなんだけど。絵と動画は違う、という典型か?大友克宏が敬愛してた作家、つまりマトリックスのウォシャウスキー兄弟の大先生に当たるはずなんですが。同好の「ブラジル」とは似て非なる駄作。
2004.03.27