<飛行機モデルのプロセス>

※この記事は、プラモのキャリアがうん十年だったり、既にいてスタンスが確立しているかたには不要ですので、読み飛ばして下さい。

 ところで、一度BBSにも書いたのですが、この手のスタンス論(飛行機モデルのポジショニング飛行機モデルのファクター)は、ややもすると鼻につくきらいがあることは良く分かっています。確かに蘊蓄ばっかりとか、言うだけ番長、評論家の類は模型集団の中では確実に嫌われますね。「言うんだったら作ってみな!」、たいていこれが殺し文句となって、そういう輩を黙殺することになっています(^_^)。しかし「場」とか「メディア」と言う意味では、今は模型サイトが一番この手の話に適していると思うのです。何故なら、面と向かってこんな講釈垂れることが出来るのは、明らかにアームの差がはっきりしている場合、例えば師匠と弟子の関係とか、ベテランが出戻り・初心者さんを相手にする場合など、明確にヒエラルキーが存在する場合においてのみ、でしょう。職人の世界の技とか、噺家の旨い下手というのは、自分と同等と思う場合はたいがい自分より一段上である、と言われるとおり、製作技術や作品の出来映えを客観視することは難しいものです。同様に専門誌でも、最近は隣のおにいさんがライターだったりするし、逆に言えば高齢化に伴い読者のレベルが往々にしてライターより上の場合が多くなってきたため、雑誌作例いえど、大して上手じゃなかったり、なんであんな偉そうに! って、具合になってしまうと思うのですよ。その点、今現在でのウェブでなら、こういう話もある程度理解していらだけるのかなあ、と思っています。何故なら、ここや、ご近所のサイトへの参加者の方々は、比較的知的好奇心に溢れ、理解力が高く、精神的にも成熟した方が多いと思うからです。選民思想と取られると困りますが、まだまだデジタルデバイドは現実に存在しますので、環境適応力の不足している方はウェブに参入していない結果だ、とも言えます。
 さてさて、模型製作のベースはやはり技術ですから、日本人の悪い癖で、職人気質が尊ばれ、暗黙知が是とされる世界でした。しかし、ここまでモデラーが高齢化し、プラモ界も成熟し、高度化、かつ各ジャンルが細分化した世界になってしまったのなら、ナレッジ・マネジメントなどという浮ついた言葉を借りるまでもなく、情報をますます共有しないことには、メーカーもモデラーも幸せにならないんじゃないかなあ、と思うのですよ。現にモデルアートの方に聞きましたら、MA別冊で一番売れるのは、機体解説本や塗・マ本ではなく、ハウツー本なんだそうです。それだけ、みんな共通基盤情報に飢えているんですよね。じゃあ技術のハウツーがあるなら、スタンス論とか、なんて言えばいいのでしょう、形而上とまで言ったら大げさだし、脳のもう半分の側の論考もあってもいいじゃないか、とまあそんな次第で、この手の論考を恥ずかしげも無く、掲げ始めたのです。もちろん、根っこにはね、そういうアプローチを試みたライターは、過去にも現在にも、かの為則さん(往年の航フのフラ・フィーという名コラムの担当者)しか居なかったじゃないか、という強い飢餓感も有るわけです。
 ただし、為さんの場合はあの、めっちゃ明るいキャラクターがあったっればこそ、この手の蘊蓄を述べてもいやらしくならなかったのですが、私のような者が書くと、ひねてるとか、うじうじ暗い感じとか、他人の褌でしか相撲がとれないとか、そういう伝わり方をしないか、やや心配なのですが、、、。


 閑話休題、一体こういう話のそもそもの出発点は何なんだろうか、と考えましたら、当たり前の事実に今さらながら気が付きました。下図の上部は、ソリッド・モデルの場合。「本物があれば、それをミニチュア化したい!」という願望が前提で、ゼロからモデルを産み出す行為(ミニチュア化と表記)ですが、下図の下部、プラモデルの場合、このミニチュア化の大部分をメーカーさんが先にやってくれている訳です。我々モデラーはそのメーカーが生産した工業製品であるところの「キット」という素材・半製品を購入、それをアッセンブル(モデル製作と表記)し、プラモデル完成品とします。ゼロから3Dのブツを産み出すソリモとは決定的に違うのは、キット購入から完成だけが「プラモデル」というホビーとして存在出来うることです(下図赤い破線で囲った部分)。ここの解釈とかスタンスが、プラモの世界では今まで、つまびらかになっていないんじゃないでしょうか? 大げさに言えば、プラモ黎明期同様、実機に関する知識などゼロのまま、手を動かしてミニチュアという仕掛けや3D化というプロセスのマジックに目をキラキラさせるのだって、プラモというホビーだし、それでは飽きたらず、自分で木型から起こしてレジンのオリジナルキットを産み出したりするヘビーなモデラーまでを含んで総称したものが、プラモなんです。著作権の問題なんかもここらへんがすっきりしていないですよね。

 

 どんじさんがかつて、「タミヤの1/32零戦は、メーカーがプラモの傑作を目指したもの」、でも「俺らは自分の傑作が作りたいんだよね」と喝破されていましたが、こういうポジションニングって、今まで全然明解知に、いやさ、暗黙知にすらなっていなかったんじゃないでしょうか?少なくとも自分では意識していなかったなあ。(注1) 

 実機のミニチュア化のプロセスは、メーカーが担っている訳で、そこに大して我ら消費者のジャッジが作用し、好きなメーカーや、嫌いな製品という選別が加えられます。ここまでは通常の製品と同じ、違うのはプラモのキットという商品はそれだけでは、「素材」「半完成品」にしか過ぎないのです。メーカーは素材提供者なんです。

 プラモのキットは素材に過ぎない(コレクターさん心理については、あたしゃあ知りません!)のですが、我らモデラーは、そこをややもすると忘れて、メーカーないしキット批判に走りがちだし、メーカーサイドも古くさい川上の強みを未だに錯誤したまま、出したやったんだから有り難く思え、みたいな不遜な考えが残っているように思います。
 モデラーは素材を料理する主婦、ちがう、シェフなんですから、そりゃあ素材は吟味します。でもさあ、それを産み出す海や大地、太陽といった自然、そしてお百姓さん(これPC的には使えない言葉?)や漁師さんへの感謝の念は忘れないですやね。その上で、悪いトコはちゃんとフィードバックしなきゃ、同じ事の繰り返しなので、言うべきことは言っておく。素材=キットの消費者であるモデラーもそれと近いスタンスで、ものごとを語れば、かなり色んな話しの通じが良くなると思うんですが、いかがでしょう?

 また、料理の仕方は、中華、和食、ベトナム料理、フレンチでも違うし、家庭料理、定食屋、レトルトで作るチェーンのイタ飯屋、一流レストランによっても違う訳ですから、そのどれを我々が選択するか、あるいは他人が選択するかは、全くもって自由です。そういう事実もあるのだよ、という認識さえしっかりとした共通基盤となっていれば、誰それの方法論は間違っているとか、あいつの考えはおかしい、などというつまらない、あるいは頭の悪い論議は出てこないのでは無いか、と思います。

 しかし、しかしですね、やっぱりそこはそれ、スケールモデラーたるもの、高い山の頂、例えばJG109サイトの名人の作などを見てしまうと、あこがれちゃうんですよ。思えば80年代モデルアートに登場した石塚昌弘氏、池田始氏、岡村昌幸氏などの超絶名人が、私のあこがれの極北を決定したかも知れません。そしてもう一方では、当時一番売れっ子だったイラストレーターの野原茂氏の「ドイツ空軍撃墜王」「シャークマウス・ストーリー」「バイセン・バード」などのグラフィック系の記事も好きで、そのアンビバレントが今に至るまで、私自身の目標とするベクトルを定められない遠因を作っているのだろうと思います。そうなんですよ、これが俺の傑作!と言える作品をいつかはものしたいと思う一方、素組みでどんどんデカールを消費していきたい欲望にも勝てないんです、ああ、私ってなんてお子ちゃまなんでしょう(笑) コンビニで、ガリガリくんとコアラのマーチのどっちを買うかで悩む愚息を笑えません!

 まあ、こういう話は異論もそれぞれ有ると思います。お気づきの点は掲示板にてどうぞ。2002年4月7日記


注1;2002年5月静岡ホビーショー合同展示会に参加、会場でファインモールド社の鈴木社長と1時間ばかり、模型談義を交わしました。実はそこは静岡の大風呂敷さんのブースの前で、ほとんど素組みにちかい、フロッグやエアフィックスやモノグラム、リンドバーグなど往年の1/72ドイツ機キット群が展示されていたのでした。そこで各メーカーの持つ風合いの話になり、先に引用した、どんじさんの「タミヤ32零戦はプラモの傑作」という話を鈴木社長に向けたところ、我が意を得たとばかり「そうなんだよね、僕もタミヤさんの零戦がでた後すばらくは、あれを目指さないといけないのか、と思っていたんだけど、ハセガワさんの32メッサーが出たら、これがいいんだよね。80%の完成度で、そこまでの素材としては良く出来てる。でもあと20%は作る人が自分で工夫しないと面白くない。このバランスがいいんだな。だからうちの烈風もその線を目指そうと思ってるんですよ。作り手の意思が反映されるキットね!」おお、そうだそうだ。と、すっかり意気投合しました。そこでかさにかかって、
 「で、社長、いつ発売を考えてるんですか?」
 「え?ダメダメそれは言えないよん(^_^)」
 あ、ちきしょう、ひっかからなかったか、チェっ!  (2002年5月25日 追記)


<関連記事>

■46 飛行機モデルのポジショニング(2002.3.3)

■58 飛行機モデルのファクター(2002.4..4 4 .6追記)

■60 飛行機モデルのメジャー(2002.4.8)