「スケール・プラモの著作権-1」

 byなかがわひろゆき さん  

(基本)
 現在、スケールものを利用して、商品(模型に限らず、ゲームなど)を開発する場合、実際のメーカーに許可を得ていることが多く行われているようです。確かに、「他人のフンドシで商売をする以上」、(有償無償を問わず)本物の許可を取る必要がある、ということでしょう。
 が、同時に、たくさんの矛盾点、問題点も山積しております(^^)。


(問題点その1)
 許可を出すにしても、これが何権に拠っているか、ということがあいまいなのです(^_^;)。スケールものの実物(車とか飛行機とか)は著作物ではなく、また、実物で意匠登録していたとしても玩具には権利が及ばなし、ゲーム上の画像は意匠法の対象外なので多くの場合、意匠権でもないのです。当然、名前は商標で押さえられますが、物の形ではないので完全ではありません。
その点、もんちとかウルトラマンとかは、模型でもゲームでもぬいぐるみでも著作物の複製物なので、権利関係は比較的明確です(^^)。


(問題点その2)
 こと模型に関しては、拳銃のメーカー・ベレッタ社等が許可無くそのモデルガンを製造した東京マルイ等を相手取って不正競争防止法違反で争った東京地裁での判決では、「模型は本物の製造メーカーの許可を取る必要性はない」との判断を示しています(H12. 6.29 東京地裁 H10(ワ)21508)。
 判決文には、次の一文があり、モデラーの立場としては良くぞ言うてくれた!という心境です(笑)。
「模型は、本物の外観を忠実に模すところに有意性が存するものであり、外観上本物にどれだけ近づくことができたかによって、模型自体やその製作者の技術に対する評価が下されることから、模型の製作に当たっては、本物の形状のみならず、色合いや質感、それに付されている模様やマークに至るまで、精巧かつ緻密に再現することが行われている(この点は、図鑑や写真集の場合と同様である。)。また、同一の対象物について、複数の異なる製作者により、いくつかの模型が製作されることも、当然に生じ得る。このような模型は、古代における墳墓の副葬品に既にその原形が見られるように、古くから人類によって製作されてきたものであり、模型の有する右のような特徴は、長年にわたって広く社会的に認識されてきた。」(上記東京地裁の判決文から)
 スケールもんにキャラもんと同じ権利が認められたとしたら、例えば、アカデミーがグラマン社から独占ライセンスを買ったとしたら、タミヤもハセガワもF−14を売れなくなっちゃうわけですからねぇ(笑)。

 (追補)
 私の場合、趣味と仕事がニアミスする場合があるので(笑)、ここらへんは何時も気にしてた課題だったんですよ。だから、こういった関係の判例見て、訴訟代理人に知り合いがいると、いろいろ個人的に質問したりしてあれこれ考えておりました。
 他に、アーテル/AMT1/72のXB-70バルキリーにビックウエストが有する商標「バルキリー」の証紙を貼る必要があったのか?、とか、ガンプラの完成品を個人サイトのギャラリーで本当に展示しちゃいけないのか?、アイボは意匠の対象である工業製品?、著作物であるキャラクター?のどっちなのか、とか、いろいろ書きたいこと山積なんですよ(^^)。そのうち、機会があったら書かせてもらえますでしょうか?


<ウェブ上で守るべき法律>
 なお、法律の話をすると(こればっかで恐縮)、web上での創作活動(文章書いたり、写真載せたり)に限れば、著作権と肖像権と名誉毀損と公序良俗違反だけを気にすればよいと思います。「名前」や「モノの形」に関する法律って、特許法、実用新案法、意匠法、商標法、不正競争法、商法中の商号・・・とあるわけですが、結局、著作権以外はビジネス法(お金もうけする人のプロの法律とでも言えばよいのかなぁ)なので、営利目的ではない限り、ここらへん一切関係してこない、と割りきってしまって大丈夫です(^^)。


<モラルとルール>
 現在、アメリカは、著作権法の保護期間を現在の著作者の死後50年から75年に延ばす提案もしてるそうですが、これも自国の強い財産を増やそうということはミエミエです(なんせ、国際的ルールが改正されるだけで自国の潜在的財産が1.5倍に増えるんすからねぇ)。
 で、再び「モラル」と「ルール」の話なんですが、欧米各国は知的財産を管理する法律を「ルール」と思ってるので、彼らにとって外国との交渉で自国に有利な取り決めを主張することは当然なんでしょう。ですが、その理由に「知的財産は人権の一部であり、尊重すべきだ」というモラルをもってくるので(いや、全くその通りなんですが(^_^;))、「ルール」と「モラル」をごっちゃにしがちな我々日本人はコロっと言いなりになっちゃうっと(^_^;)。これが捕鯨問題とかだと、「鯨は知的レベルが高いので捕獲禁止だ」というモラルで来られても、比較的冷静に反論して「ルール」としての捕鯨条約に対応してると思うんですけどね。
 別のところでも書きましたが、「モラル」は非常に大切だとは思うんですけど、でも、「ルール」は権利の行使者と権利の被行使者との公平から線引きされるものなので、これをごっちゃにしてはいけない、ってなところでありんしょう。
 まぁ、アニメをはじめ日本の著作権財産も相当なものですから、米国の尻馬に乗って保護期間延長に賛成するってのも国家戦略としては悪くないですね(笑)。

 ついでに言うと、情報をお金として扱うお仕事をずーっとしてると、情報は公共のもの(無償でやりとりするもの)というお約束がベースにあるネットの世界は非常に居心地の良いところなんですよ〜(^^)。大げさに言えば、インターネットネットという世界は、本当の世界を救ったんじゃないか知らん、と思ってるぐらいで(笑)。


<商標をプラモデルに貼付する行為>

 ちなみに、モデラーが「☆★マークを模型に付ける」行為は、商標の使用行為に当たらないので(商標の使用行為=商品に識別標章として付する行為:模型は商品ではないので)、法律上は全然平気です。ただ、法律とは別に、お伺いを立てる、というのは礼儀として(モラルとして)よいことだとは思います。では(^^)/。by なかがわひろゆきさん



<がらんどうの蛇足>
 
 以上は、この方面の専門家である中川さんによるプラモデルに関する著作権のお話。かさぱのすさんのサイト「あんてーくし」での回答や、私とのメールでのやりとりを引用させていただき、再構成いたしました。 

 私たち、モデラーにとって気になるのは、半完成品、素材である「プラモデルのキット」という商品を完成させた後の、「完成品」の知的所有権はいったいどう考えればいいいのか?ということもあると思います。簡単に言えば、作った作品、完成品の写真を掲示するのに、誰かの許可がいるの?ってこと。メーカーなのか、製作者なのか。こんなあたりも含めてまた続編ができるといいと思います。

 ハセガワさんが主催しているJMCコンテストの場合、「応募した作品著作権は、JMC事務局に帰属します。」となっています。一見非常に傲慢かつ強制的圧力行為に映りますが、しかしこれは、何もハセガワさんが権利ビジネスを展開する訳じゃないので、製作者が他のコンテスト(他メーカー、雑誌、模型店等)への二重参加を防止する意味合いが強いと聞きました。応募者のモラルが高ければ無粋なことは必要なかったんですよ、皆さん。本来、著作権が製作者から移動することはないので、使用権とか版権をハセガワさんが有する、が正しいと思います。

※関連記事:フィリックス・ガムの味

※関連記事:スケールモデルと著作権-2